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※本稿には、『龍が如く8』に関するネタバレが部分的に含まれている。核心的な言及はないものの、留意して読み進めてほしい。来年で初作発売から20周年を迎える『龍が如く』シリーズ。その原点は「Vシネマ」にあったと筆者は考える。俗に言う「良いヤクザ」である桐生一馬が、「悪いヤクザたち」を、男気をもって打倒していく、任侠活劇を題材としたアクションアドベンチャーシリーズだ。大衆向け作品でありながら、「Vシネマ」というアンダーグラウンドなモチーフを採用したことで、日本文化の露悪と、悪という概念そのものが持つシリアスでポップな魅力を描くことに成功。“ガイドブックに載らない”日本文化を体験できる作品として、現在では海外でも評価されるタイトルに成長を遂げた。
これによって「Vシネマ調」に囚われない物語体験を成立させることができるようになっただけでなく、さまざまなヤクザ以外の人間が登場しているサブストーリーの立ち位置が向上している。本編以外の遊びが「遊ばなくても良いコンテンツ」から「遊んだほうがメインストーリーをより楽しめるコンテンツ」になったと言った方がわかりやすいだろう。JRPGのオマージュを取り込んだことで、シリーズおなじみであるシネマティックでファンタジーじみた演出の違和感も薄れた。リアルな世界でJRPGを演じるという構造そのものがファンタジーだからだ。 まず「春日一番編」に関しては前作にてJRPGをジャンルに採用したことが功を奏している。舞台を外国にしたことも合わせ、これによってコメディタッチな側面をより多様な内容にすることが可能となり、サイドストーリーの描写含め、『龍が如く7』以前からの差別化をさらに促している。超巨大な魚介類との戦闘をメインストーリー中に行ってもたいして違和感がないのは、Vシネマ調に囚われない春日一番の明確な強みだ。
Vシネマからの脱却を成し遂げるため、方や「新たなビジョン」を遂行し、かたや「ヤクザは反社会的組織である」という認知を通じて前主人公の物語に幕引きを行った本作。二正面作戦という凄まじい力技であったが、残念ながらその代償は確かに存在している。それは敵キャラクターに関する描写の乏しさだ。『龍が如く8』は2本の物語を同時並行で描いたことで尺不足に陥り、作品が持つメッセージ性の強調を優先している。そのため、主人公たちの主張に明確な反対意見を持った敵対者はまだしも、単なる利害関係上、敵対することになったキャラクターの掘り下げが不十分になってしまい、使い捨てのような形になってしまっている。本作は戦闘をゲームプレイの中心に据えているため、魅力的なボスキャラクターの存在は必須である。
シリーズ恒例のミニゲームもまた非常によくできており、それぞれ体験の方向性が異なりつつ、プレイヤーのスキルアップを肯定する内容が揃っているのが特徴である。ひとつひとつのミニゲームに対し、戦闘と同様、やり込むことに意味が設けられている。なかでもスジモンバトルとドンドコ島はこれを作品単体として独立させることができそうなポテンシャルを秘めている。本作はこれらの体験を用意することで、通常多くのJRPGにおいて体験の山となるボス戦を、数ある面白いコンテンツの1つにしている。
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