職場に漂う香水や柔軟剤の香り。使っている当人は気付かないまま、周囲の人が化学物質過敏症を発症してしまうこともある。「頭痛がする」「せきが止まらない」。ただでさえ、注意しにくいにおいの問題。困っていながら、上下関係などから声を上げにくいと感じている当事者たちは、自覚なき「香害」に頭を悩ませている。(時事ドットコム編集部 川村碧)
「職員室で香りの強い人が近くにいると、せきが出て息苦しくなる」。そう話す女性は職員会議で過敏症を公表。症状がつらいことを伝え、同僚教諭に「使っている柔軟剤の種類を見直してほしい」とお願いした。2人からは「見直す」との言葉があったが、他の同僚からは反応がなかったといい、「どう思われているんだろう。もう少し違う伝え方があったかもしれない」と感じている。従業員の声を受け、改善に乗り出した企業もある。天然エビの加工販売「パプアニューギニア海産」(大阪府摂津市)の代表、武藤北斗さん(48)によると、数年前、従業員の作業着から柔軟剤の香りを感じるようになった。その都度、声掛けしていたが、だんだんと香りの強い人が増加。「気持ち悪くなる」「めまいがする」などと訴える従業員も出るようになり、1年半前、本格的な改善に取り組み始めた。
ミーティングで繰り返し香りへの配慮を呼び掛け、複数人から指摘があった従業員には個別に「対策してください」と注意した。「ただ、注意しても『香りがしますか?』という反応で、自覚がないパターンがほとんど。なかなか改善しない人もいた」。最終的に、従業員の使っている洗剤・柔軟剤を聞き取り、香りの強い製品の情報を社内で共有することにした。 「香りのことを注意するのはプライベートに口出しするようで、正直嫌だった。強く言うとセクハラやパワハラになるのでは、とも考えたが、苦しんでいる人がいる。厳しく対応した」と武藤さん。改善の中で、自身もストレスに感じていた口頭注意は、メールでの指摘に切り替えたそうだ。対策は従業員からも支持されているというが、「注意された側が『嫌がらせなんじゃないか』と誤解してしまう危うさも感じていた」と語る。先に紹介した接客業の女性は、意を決し、男性上司に困っていることを伝えたそうだ。香水などの使用をやめてもらえたが、症状は続き、「我慢せずにもっと早く言えばよかった」と話す。女性教諭は「香りがきつい同僚に個別にお願いし、反発されたこともある。においという言葉を使うと感情的になる人も多い。当人が『誰かの害になっている』と思っていないところが問題の難しさ」と語っていた。
「隣の席の人の香りが強すぎる」といった悩みはSNS上でもささやかれている。もし職場で香りの問題が起きたらどのように対応すればいいのだろうか。ドリームサポート社会保険労務士法人の特定社会保険労務士、田所知佐氏に取材した。
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