上場企業は適時開示が義務付けられている…写真は東京証券取引所日本企業がかかわるM&Aでちょっとした“異変”が起きている。1000億円を超える大型M&A(適時開示ベース)が7...
日本企業がかかわるM&Aでちょっとした“異変”が起きている。1000億円を超える大型M&A(適時開示ベース)が7月から10月まで4カ月連続で途絶え、2013年3月から6月にかけて記録して以来10年ぶりとなった。M&A件数そのものは過去10年で最多のペースで推移しているが、夏場を境に案件規模が目に見えて細っている。今年のM&Aで金額が最も大きいのが東芝の非公開化を目的とする2兆円規模のTOB(株式公開買い付け)案件で、3月に発表があった。これを筆頭に1000億円を超える大型M&Aは10月までに7件あるが、6月に半導体材料大手のJSRが政府系ファンドの産業革新投資機構による9000億円規模のTOBを受け入れて非公開化すると発表したのを最後に4カ月の間、途切れている。
前回、1000億円超のM&Aが4カ月続けてゼロ件だったのは2013年3月から6月にかけて。2013年といえば、デフレ脱却を目指してアベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)が始動したが、この年は1000億円超のM&A自体が年間を通じて7件にとどまった。2009年、2010年、2014年も年間7件と同様だったが、それでも“ゼロ行進”は3カ月で止まった。1000億円超の大型M&Aは2015年以降、年間10数件〜20件程度で推移。コロナ禍初年の2020年は9件と6年ぶりに1ケタに落ち込んだものの、2021年19件、2022年13件と持ち直した。足元の2023年は2カ月を残すが、2ケタに届くかどうか現時点では微妙だ。年間のM&A総数はリーマンショック翌年の2009年に800件台を割り込んだ後、一進一退を繰り返し、2010年に630件台まで低下。アベノミクスの幕開けとなった2013年も再び630件台に落ち込んだが、これを大底に右肩上がりをたどり、2019年に11年ぶりに800件台を回復した。コロナ禍の影響で2020年は足踏みを余儀なくされたが、その後は増加に転じ、2022年は年間949件とリーマンシ
2023年のM&A金額を四半期別にみると、夏場以降の落ち込みが明らか。1〜3月、4〜6月が各2兆6000億円程度だったのに対し、7〜9月は約8500億円と伸び悩んだ。10月単月は2143億円と、今年に入って月別で3番目の低水準だった。海外案件は国内案件に比べて金額が膨らむことが多いが、ここへきて巨額買収が姿を消している。 昨年春以来の円安は夏場から再加速し、景気減速への懸念が広がっているうえ、日本企業にとっては海外企業を買収する際の資金負担が増している。さらには円安抑制も踏まえつつ、先行きに金融政策の正常化による金利上昇リスクも控えているだけに、大型M&Aには逆風となることが予想される。