バブル期に「投資の場面では『今度こそ違うんだ』という言葉ほど危険なものはない」という言葉を耳にするが、私はこの有名な警告が実用的なものだと感じたことはない →爆発的なAIと加速でインフレは急速にデフレに転じる
故ジョン・テンプルトンは「投資の場面では『今度こそ違うんだ(This time it's different=TTID)』という言葉ほど危険なものはない」と警告した。TTIDはバブル期によく耳にする言葉だ。たとえば1990年後半や、2015年から2020年にかけて、ソフトウェア株が売上高の10倍から20倍に評価されていた時期などがその時期に相当する。
私は、テンプルトンのこの有名な警告が実用的なものであると感じたことはない。マーケットのタイミングに精通していれば、バブルへの投資もうまくいくだろう。ただしバブルが弾ける前に脱出するのがコツだが。テンプルトンの警告は、保守的なバリュー投資への賛歌として有名だが、それはあるときしか当たらないし、振り返ってみて初めてわかるだけだ。 ここで、テンプルトンよりも役に立つと思われる真理を紹介しよう。それはリチャード・ニクソン元米国大統領の顧問だったハーバート・スタインの言葉だ。スタインは「永遠に続かないものは、止まる」と言った。一見したところ、スタインのアドバイスは非常に単純で明白なのだが、これにどうして価値があるのだろうか? 価値があるのは「止まる」という言葉だ。それは、いつトレンドが止まるのか、なぜ止まるのか、そして(真剣な投資家であれば)このトレンドが天井に達して崩壊する兆しが何かを問いかける。
2023年の経済と、20年代の残りについて考えるとき、スタインの言葉を思い出してほしい。今日止まることのないと思われるトレンドも、いつかは止まる。たとえば、インフレと金利のトレンドを考えてみよう。長い間インフレを無視してきた社会通念は、今ではインフレ以外のことを心配しなくなっている。世界は、2009年から2021年にかけての低金利時代と、同じくらい長く続く高金利時代に直面しているといわれている。中央銀行の金利が5%になることを「正常への回帰」だとする話はよく耳にする。この「新しい正常」は、賢明な資本主義、節度、常識への回帰であり、過剰なレバレッジがすべて取り除かれることは良いことだとされている。
心慰められる考え方だが、それは私たちが直面している未来ではない。画期的な新技術の加速要素、生成AIが登場したからだ。私たちのほとんどは、テクノロジーを追いかけている人たちでさえ、わずか5カ月前まで、イーロン・マスクらが設立したAIの利用を容易にする私的研究機関のOpenAI(オープンエーアイ)の存在を知らなかった。そして2022年11月30日、OpenAIはChatGPT(チャットジーピーティー)というAIアプリを一般公開した。1週間で100万人が登録し、AI時代はいきなりワープスピードに移行した。
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