問題行動のある子どもに注意しても変化の兆しが見えない、ほかの子には有効な指導が通用しない──。子どもへの対応がうまくいかず、疲弊している教員もいるのではないだろか。こうした中、注目されているのが、トラウマの影響を理解しながら相手に接する「トラウマインフォームドケア(Trauma Informed Care)」(以下、TIC)だ。臨床心理士として学校現場にも関わる、大阪大学大学院教授の野坂祐子氏に、学校におけるTICの重要性や導入事例などについて聞いた。
トラウマティックストレスといい、ストレスの一種ですが、主に3つの特徴があります。1つ目は、自分でコントロールできない体験であること。自然災害や事故のほか、日常的な虐待など被害が繰り返される環境も含まれます。2つ目は、恐怖や衝撃が大きいこと。そして3つ目は、普段の対処法が通用しないこと。トラウマの場合、睡眠や飲食、友達に話すなどの日常のストレス発散法では回復しません。
ほかの研究でも、トラウマは地域・人種・経済的事情などに関係なく、あらゆる人の身体的・精神的・性的な健康の問題であると確認されており、現在、TICは精神科医療に限らず、家庭・学校・地域・行政などあらゆる領域で行うべき公衆衛生のアプローチと位置づけられています。トラウマの影響による問題行動は、「暴言や暴力はよくないこと」という知識や指導だけでは変えられず、自分や他人を傷つけるリスクのある行動は続きます。子どもは「やめなさい」と言われても納得できず、「わかってもらえない」「自分ばかり怒られる」という被害感を強めて、教員との間に悪循環が生じるおそれもあります。親身になっても子どもの行動が悪化していくので、教員も怒りや無力感を抱くようになります。この怒りが体罰など不適切な対応につながることも。ですから、学校にこそTICは必要なのです。トラブルとして目立つのは、過覚醒による落ち着きのなさ、多動、話を聞かない、攻撃的な言動など。例えば、家で暴力を振るわれている子が、友達の何げない言葉に反応して怖くなり、いきなり怒ったり友達を突き飛ばしたりしてしまうことがあります。
それを指摘すると、担任の先生は「そんな昔のことで?」と驚いていました。しかし、それこそがトラウマなのです。その後、先生が「あなたのことを笑っているのではないよ」と伝えながら一緒に楽しい時間を重ねることで、この子はお楽しみ会などに参加できるようになりました。 トラウマを抱える子は、特定の場面が怖かったり、気持ちを上手に表現できなかったりするので、安心して発言できる学級づくりも重要です。先生がすべて決めて導くというより、先生も子どももお互いに人間としての感情を言えるような、セラピューティックな(回復しやすい)場にすることが大事です。保護者が怒鳴り込んできたときなども、「トラウマのメガネ」で見てみると、相手が不安で声が大きくなっていることに気づき、「どうされましたか。その点を不安に感じられたんですね」と落ち着いて対話できるようになります。ただし、要求が強い保護者に対し、「できないことはできない」と線を引くのは管理職の仕事です。そもそも今、先生方を取り巻く環境はトラウマティック。労働時間は長く、子どもや保護者の対応で傷つく場面は多いでしょうし、同僚や管理職に守ってもらえない、地域や社会が学校に敬意がないといった状況に苦しまれている先生も多いと思います。幼少期のトラウマがある先生は、同じようにつらい思いをしている子どもを支えたいと思う一方で、学校には子ども時代を思い出すきっかけがたくさんあり、過去の傷がうずくつらさもあるでしょう。
South Africa Latest News, South Africa Headlines
Similar News:You can also read news stories similar to this one that we have collected from other news sources.
ビジネスパーソンに人気のモバイルノート、レノボ「ThinkPad X1 Nano」が第3世代でさらに進化! ~ビジネスノートの選択に迷っている人への2023年おすすめモバイルノート集 その2[Sponsored]レノボ・ジャパン(以下、レノボ)の「ThinkPad」シリーズの中で、ブランド史上最軽量を実現していることで人気のビジネスモバイルノートPC「ThinkPad X1 Nano」シリーズ。その第3世代モデルとなるのが、今回紹介する「ThinkPad X1 Nano Gen 3」だ。
Read more »
聴力は問題ないのに会話の内容がわからない…それは「APD」の可能性聞こえているのに聞き取れない──。近年、注目されているのが「聴覚情報処理障害/聞き取り困難症(APD/LiD)」だ。聴力検査では異常はないのに聞き取りにくさを感じ、日常生...
Read more »