サウジアラビアのジッダに向かう途中、イスラム教の聖地メッカの上空を何度か飛んだことがあるが、ハッジ(大巡礼)の期間中のフライトはとりわけ記憶…… → 中国は中東における米国の地位を奪いつつある
サウジアラビアのジッダに向かう途中、イスラム教の聖地メッカの上空を何度か飛んだことがあるが、ハッジ(大巡礼)の期間中のフライトはとりわけ記憶に残っている。飛行機がメッカに近づくと、たいていパイロットは機内アナウンスで祈りを唱え、乗客もほとんどが祈りに没頭する。さらに印象的なのは、ジッダ空港からメッカまで続く大規模なインフラ設備だ。この光景を見ると、世界中のイスラム圏から毎年、数百万人もの巡礼者がメッカを訪れるという実感が湧く。
そのメッカで、イランのシーア派イスラム教徒が歓待される日が、数カ月以内にくるかもしれない。中国の仲介外交により、イランとサウジアラビアが外交関係の正常化に合意したからだ。この出来事がただちに中東に地政学的な革命をもたらすかはわからないが、さまざまな意味で重要であり、中東諸国間の緊張を緩和する(「近隣諸国との問題はなくなる」)のは間違いない。一方で、中東以外の地域との間でストレスを誘発する可能性もある。 イランにとって、今回の合意には複数のメリットがある。対中貿易の拡大「責任ある」地域主体としての権威性、イラクとシリアに対する絶大な影響力を強化する機会、イエメンへの資源投入の減少、サウジアラビアと関連のあるメディア(特に英ロンドンのメディア)によるイラン国内政治への猛烈な圧力の軽減などだ。また、ライシ大統領のサウジ訪問が実現すれば、抗議デモの拡大に直面するイラン政府に正当性を付与できるだろう。サウジアラビアにも複数の利点がある。特にイエメンでの戦争と、それにともなうサウジへの攻撃は、終結しないまでも落ち着くだろう。石油インフラや飲料水の利用は今より安全になる。中国との商業関係の緊密化は、通貨安と高インフレが進むサウジにとって歓迎すべきことであり、その当然の帰結として、米国にはサウジ政府に「魅力攻勢」をかけるよう圧力がかかるだろう。外交的には、サウジアラビアは今、危険なヘッジをしている。上海協力機構(SCO)に「オブザーバー」として参加する予定だが、SCOについては中国主導の反NATO集団と考えることもできる。この協定の原動力となったのは、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子だ。非常
地域全体として見れば、外交関係の回復により、関心の焦点は地域の地政学的緊張から経済成長へと移るだろう。中国にとっては、特に貿易面での大きな勝利である。中国は、イランとサウジアラビアの両国から石油を入手でき、域内での人民元の使用を促進し(ブラジルとの最近の貿易協定も同様に人民元の使用を促進する)、域内でより多くの中国製品を販売することになる。不動産市場へのアクセスはいうまでもない。
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