◆中国「ウィズコロナ」で春節活況 住宅不況、自動車低迷で先行きは不透明【解説委員室から】 記事は⇒ 「開門紅」。春節の消費動向について中国当局者は胸を張った。「幸先良いスタート」という意味だ。中国は昨年末の「ゼロコロナ」撤廃を受けた大混乱を乗り切ったのか。
商務省によると、全国の重点小売り・飲食企業の売上高は同6.8%増加した。消費を図る指標である小売売上高は昨年10月以降、3カ月連続で前年同月比マイナスが続いており、春節前後の活況は、3年間のゼロコロナから解放されたことによる「リベンジ消費」に期待を抱かせるデータとなった。
中国の経済成長目標は3月の全国人民代表大会(全人代)で公表されるが、これに先立ち全国31の直轄市・省で年明けから春節前までに相次いで地方人民代表が開かれ、各地方の成長目標が設定された。それによると、22年実績がマイナス0.2%に冷え込んだ上海市は「5.5%以上」、全国最大の経済規模を誇る広東省は「5%以上」と22年の0.9%からの大幅回復を見込んだ。海浜リゾートを抱える海南省(海南島)は観光需要を当て込んで「9.5%前後」と強気な数字を設定した。北京(4.5%以上)、天津(4%前後)を除くといずれも5%を超える比較的積極的な姿勢で臨む。ただ、本当に消費が戻ってきたのかどうかは即断できない。農林中金総合研究所の王雷軒主任研究員は「地方政府が主催してさまざまなイベントを開催したり消費券(クーポン)を配布したりして、あの手この手を使って消費盛り上げを図ったことも大きく、本格回復かどうかはまだ読めない」と指摘した。実際、全国主要観光地の約9%に相当する1281地区で入場料の無料化を実施するなど人為的な消費底上げ策もいろいろ講じられたようだ。
確かに前年と比べれば「ゼロコロナ」撤廃効果と消費刺激策の分だけ増加したと言えるものの、コロナ前の19年比ではまだまだ物足りない。例えば延べ8億9200万人に達した「春運」にしても、19年比では46.4%減で、半分強まで戻したにすぎない。住宅市場は引き続き弱く、「春節中は中古を含めて住宅販売は不調で、改善の兆しさえ出ていない」(王研究員)という。電気自動車(EV)など新エネルギー車(NEV)が伸びている自動車市場も年明けは伸び悩んだ。昨年6月に導入したガソリン車の取得税半減という優遇策が年末で終了した影響が大きいとみられる。中国自動車工業協会によると、1月の新車販売台数は、春節休暇で営業活動が低下したこともあって、164万9000台で前年同月比35%の大幅マイナスを記録。好調だったNEVも同6.3%減とさえない数字だった。特にガソリン車主体の日系メーカーの落ち込みは大きく、メーカー別の前年同月比減少率はトヨタ自動車23.5%、ホンダ56.2%、日産自動車は64.4%に達した。
感染爆発のピーク越え、春節前後の消費増加を受けて、中国経済ウオッチャーらは23年の景気見通しを引き上げている。国際通貨基金(IMF)は1月31日公表の世界経済見通しの中で中国の成長率について、従来の4.4%から5.2%に大きく引き上げた。日本は1.8%、米国1.4%、ユーロ圏0.7%なので、主要経済国の中で中国は突出した数字を記録することになる。もっとも、20年の2.2%から21年の8.4%に急回復させた時ほどの勢いではなさそうだ。