東欧・ハンガリーは「親ロシア」の姿勢を取る。オルバン首相はウクライナへの支援に消極的だが、多くの国民はそれを支持している。毎日新聞の三木幸治記者は「オルバン首相はウクライナに住むハンガリー系住民を支援してきた。ウクライナに冷たい理由はここにある」という。三木さんの著書『迷える東欧 ウクライナの民が向かった国々』(毎日新聞出版)からお届けする――。
オルバン氏が国際的に脚光を浴びたのは2015年だった。シリア紛争などで混迷する中東、アフリカから約100万人の難民・移民が欧州に流入し、「欧州難民危機」が発生した。オルバン氏は難民らを受け入れたドイツなど西欧諸国に反旗をポーランド、チェコ、スロバキアなど、難民らを受け入れる経済的余裕がない国々はオルバン氏に強く賛同。難民問題を巡って、EUは「西欧」と「東欧」で鋭く対立した。EUは東欧の経済力を引き上げるために巨額の支援を続けており、東欧からEUに反旗を翻すのは、異例のことだった。
オルバン氏は「自分たちの権利を主張できる強いリーダー」として、国内外で評価を高めた。オルバン氏は2010年以降、4回の選挙で圧勝。オルバン氏の統治が長くなるにつれ、ハンガリーはEUの中でも特異な国家に変わっていった。欧州よりロシアに近い強権国家になりつつあるのだ。 ハンガリーの歴史を少し、振り返ってみる。ハンガリー人(マジャール人)は東方からやってきた遊牧民族が祖先とされる。他の東欧諸国はスラブ民族が多いが、ハンガリーは異なる。言語もフィンランド語に比較的近い独特の言語で、隣国の国民とは意思疎通できない。 ハンガリー人は、西暦1000年にキリスト教を受容し、ハンガリー王国を成立させた。だが、16世紀にオスマン・トルコ帝国、17世紀にはウィーンを首都とするハプスブルク帝国の支配を受けた。民族主義の高まりを受け、帝国内で自治権を獲得すると、第一次大戦後にハンガリー王国を復活させた。
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