米中堅銀行ファースト・リパブリック・バンクは、同行の急成長を支えた富裕層客が預金を引き出し始めたことで経営が揺らぎ、米地銀危機の震源地となった。
シリコンバレー銀行(SVB)とシグネチャー銀行の経営破綻を受け、JPモルガン・チェースを筆頭とする米大手行はファースト・リパブリックに計300億ドルの預金を預けて同行の資金繰りを支えるとともに、同行のための資本調達を探ってきた。ファースト・リパブリックは長年、住宅ローンや融資に優遇金利を提示して富裕層の客を呼び込んできた。米国の預金保険制度では1つの貯蓄口座につき25万ドルまでしか保護されないため、富裕層を客に持たない他の地銀に比べて同行は危うい状況にある。金利の上昇に伴ってファースト・リパブリックの融資および投資ポートフォリオの価値も下がり、資本調達の妨げとなっている。アナリストや投資家は、同行の含み損を94億―135億ドル程度と見積もっている。ファースト・リパブリックの広報担当者は、客や地域社会の支援を受けて、同行の銀行部門と富裕層向け資産運用部門は口座開設や融資などの事業を継続していると説明した。
同行は1月に開いた投資家向け説明会で、株主リターンが複利で年率19.5%と、他の地銀の2倍に達すると胸を張っていた。富裕層客に照準を定めた戦略を説明し、同行から一戸建て住宅向けローンを借りている客の現金保有額は中央値で68万5000ドルと、平均的な米国民よりはるかに多額だと指摘した。同行幹部のロバート・リー・ソーントン氏は昨年11月9日に投資家に対し、「お得意様向けの最優遇金利を利用していただくため、完全なデポジット・リレーションシップ(融資実行の条件として、その銀行に主要な預金口座を開設すること)を当行は望んでいる」と説明。「これが最も力を入れている点であり、これほどの急スピードで預金残高を増やすことができた一因だ」と述べた。
ニューヨーク市の記録によると、同行は2月にマンハッタンのコンドミニアムを買った客に期間30年超、1000万ドルのローンを当初金利4.6%で実行している。これに対し、バンク・オブ・アメリカのウェブサイトを見ると、同行が同じ地区の大型住宅ローンに適用している金利は現在5.5%だ。ジェームス・ハーバート氏が1985年に創業したファースト・リパブリックは当初、低金利の大型融資に注力していた。2007年にはメリル・リンチに買収されたが、メリルを買収したバンク・オブ・アメリカに売却されて10年に再上場した。 フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグ氏はカリフォルニア州パロアルトの住宅を購入するためにファースト・リパブリックから期間30年、595万ドルのローンを借りたことが、2012年のブルームバーグの記事で分かっている。プライベート・エクイティー(PE)企業、スメル・エクイティー・パートナーズの共同創業者、ランディー・ランドルマン氏はロイターの取材に答え、同社はファースト・リパブリックの優遇金利を利用して成長するハイテク企業に投資するなどしたと説明。「(同行は)われわれのような企業に非常に高いレベルのサービスを提供してくれる」とし、自身は今でも忠実な客だと述べた。ファースト・リパブリックの含み損が膨らみ始めたのは、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ対応のために急速な利上げに着手した時だった。政府が介入するか金利が低下するかしない限り、この含み損はファースト・リパブリックを買収する企業によって、もしくは同行自身が流動性確保のために売却することによって実現化せざるを得ない。
ボストン大学ロースクールのパトリシア・ア・マッコイ教授は「富裕層客は、非常に低い金利で多額の住宅ローンを借りられることが一因でファースト・リパブリックに引きつけられた」と指摘。金利が大幅に上昇した今、こうした低金利の住宅ローン債権は潜在的な買い手企業にとって価値が大幅に下がっており、「大きな負担になる」と語った。
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