「ゴジラ‐1.0」の監督を務めた山崎貴と音響監督の井上奈津子によるトークセッションが、第36回東京国際映画祭のイベントとして本日10月31日に行われ、同作のDolby Cinema版の制作についてさまざまな裏話が飛び出した。
山崎は自作のDolby Cinema対応が初めてということで「念願でした。この作品で実現できてうれしい」と喜びをあらわに。ScreenX、MX4D、4DX、IMAXでも上映が決定しており、「ラージフォーマットは全部やる。それならDolby Cinemaも必須だろう」という流れで実現に至ったそう。まずはDolby Visionの映像について山崎が熱弁。「IMAXなど映画の没入感を高めるフォーマットはいろいろありますが、Dolby Cinemaはスクリーンの向こうに、もう1つの現実世界があるような感覚。物体が本当にそこにあるように見えるんです」と述べ、「“怖いゴジラ”を表現したかった。脳が錯覚するほどのリアリティを出せるのがDolby Cinemaだったんです」と、表現の方向性にぴったりだったことを明かす。
Dolby Visionの映像では、従来よりも明暗を鮮明にするハイダイナミックレンジ(HDR)が実現。色彩の幅も段違いで、山崎は「明るい黒から暗い黒まで表現できる」と興奮しながら説明する。暗闇のシーンについては「黒にこんなに階調があったのかと。人間って暗闇で目を凝らすと(目が慣れてきて)いろいろな情報が見えてくるけど、映像になるとほぼ黒になってしまう。でもHDRは夜に肉眼で見ているような感覚です」とアピール。光の表現に関しても「まぶしい明るさだけど、白飛びではなく、まぶしさの中にも階調があります」と解説する。井上からは音響チームの苦労話も。「監督とプロデューサーに見せるとき『めちゃくちゃいいね!』と言ってもらえると期待していたら、『あれ? こんなもん?」みたいな反応で……」と苦笑い。7.